実に1年半振りのアプリレビュー第4段。
今回は、WWDC2017でのwatchOS4紹介のときから密かに期待していた、バックグラウンド録音対応アプリについて比較レビューなどしてみようと思う。
APIのざっくり説明
アプリレビュー第1回(過去エントリ)でも触れていたが、OS2の録音APIは、そもそもバックグラウンドでの録音ができなかった。画面も常に点灯したままだ。
OS4のバックグラウンド録音は、その名の通り、アプリがバックグラウンドに回っていても録音を継続する。文字盤に戻ると分かりやすく録音中アイコン(実はボタン)が表示される。もちろん画面を消灯しても録音は継続される。
ここまでは共通のバックグラウンド録音のAPIの話。今回肝心なこととして、前回のアプリレビューでも〆に書いたが、OS2の場合だとアプリの差が出にくかったが、OS4の場合は打って変わって録音時そのものの動作・UIが大きく異なる。これは、バックグラウンド録音の受け皿は共通で性能差は出ないが、録音するための処理はアプリ開発者に委ねられる、ということを意味する。
このため、前回では「どれでも大して変わらない」的なニュアンスだったが、OS4の(バックグラウンド録音対応の)録音アプリは、それぞれ操作感など別物となるため、じっくり吟味しなければならない。のでさっそくレビュー。今回は一気に4つだ。なので長い。
アプリ紹介1:SimpleMic(iTunesリンク)
1つ目。その名の通り超シンプル録音アプリ。無料だ。
無料版では録音時間に制限があるらしく(未確認)、解放するにはプレミアムアップグレードとやらで¥360いる。
- Watchで録音後、iPhoneへのファイル転送は自動
- iPhoneからPCへのファイル転送は、iTunesファイル共有機能を使う
- Watchアプリでは録音したファイルの確認や再生ができない
- 無料のままだと録音時間制限や共有メニューが使えない等、機能的に不十分
(共通APIの話)
録音中に文字盤に戻ったり画面消灯しても、バックグラウンド処理により録音は継続される。文字盤上にある(見にくいが)マイクアイコンをタップするとアプリ画面に戻る。ワークアウトアプリもそうだが、OS3ではボタンかどうか分かりにくかったからか、OS4では白丸で囲まれてボタンらしくなった。気がする。
スリープ直前の状態がアプリ画面・文字盤画面だったかを問わず、1分以上画面消灯させた場合、次に画面点灯するとアプリ画面(録音継続中)に戻る。
なお、紹介している4アプリともOS共通のAPIを使用しているため、この部分は同じ挙動となる。
話を戻して、SimpleMicのレビューつづき。
ちなみに、iPhoneが機内モードもしくはWatchと通信圏外のときは、Watchとの通信が復帰した時点で自動転送された。つまり、録音完了後は、常にiPhoneへの通信をバックグラウンドで試みていることになる。強制タスクキルした場合は未検証。おそらく手動でアプリを起動させる必要があると思われる。
録音したファイルはrecordings上にすべて保存されるため、ファイル単位での転送ができないところがネックか。
UIは超シンプルだが、それゆえの物足りなさ…というか、どうも必要なものまで抜けている感がある。無料のままだと時間制限等もあるが、録音メモとして数秒録音が使えれば、といった用途ならば十分か。
アプリ紹介2:Aurora Recorder(iTunesリンク)
2つ目。これもシンプル路線。無料だ。
iPhoneアプリの方には録音機能がない、正にWatch専用アプリといったところか。広告もなく非常に使い勝手もよい。個人的には最強だ。
- Watchで録音後、iPhoneへのファイル転送は自動
- コンプリケーションあり、ワンタップで即録音が可能
- iTunesファイル共有機能が(まだ)ない
このアプリ、先にも書いたがiPhoneアプリでの録音はできない。このため、ほかの3つのアプリでは先にiPhoneアプリを起動してからマイクアクセスを許可する方法もあるが、このアプリはWatchアプリ(初回)起動時にマイクアクセスを許可してやる必要がある。
先のSimpleMicはiPhoneへのファイル転送は完全自動で、iPhoneと通信できたら自動転送するからメニューもない、というのはある種アップル的ではある…が、やはり手動オプションはあった方が安心だ。※実際に他の3つのアプリでは手動転送はメニューとして用意されている。
SimpleMicと比較して、やはりWatch側で録音一覧の確認や実際に音声再生ができるのはよい。
PCへのファイル転送は、iTunesファイル共有が(現状)使えないので、共有メニューから何とかするしかない。MacであればAirDropが便利だ。
実際のところ、無線でのファイル転送ではファイルサイズ制限があるのか不明で、やはり有線でのファイル転送はほしかったところ。ただし、上の画像にもあるが、約1時間の録音ファイルでも25MB程度だったので、気にする必要もないのだろうが。
このアプリでしか確認していないが、1時間の録音したときの参考情報だ。
- Watch(初代機)のバッテリー:約15%減
- iPhoneへのファイル転送時間(Bluetooth使用):約4分
- 録音ファイルのファイル容量(mp4形式):約25MB
(コンプリケーションの話)
このAuroraと次に紹介するJustPressRecordの2つは、コンプリケーションにも対応している。どちらもアイコンタップでアプリが起動してから、即録音がスタートする。
このアプリ、iTunesファイル共有を除けば言うことは何もない。UIもシンプルだが小綺麗にまとめられている感がある。
アプリ紹介3:Just Press Record(iTunesリンク)
3つ目。多機能。有料で¥600。
watchOS2の頃からあった録音アプリ。Watch録音アプリと言えば必ず名前が挙がるほど。OSアップデートの度に積極的にアプリ更新があり、バックグラウンド録音への対応もかなり早かった記憶がある。有料(しかも¥600)というだけあり、見た目も機能も優秀だ。Mac版もある。
- Watchで録音後、iPhoneへのファイル転送は自動
- コンプリケーションあり、ワンタップで即録音が可能
- iPhoneからPCへのファイル転送は、iTunesファイル共有機能を使う
- 音声からの文字起こし機能あり
- iCloudドライブへの自動保存が可能
- 録音・再生中のアニメや、録音一覧はクラウンで選択したりとオサレUI
欠点が見つからない。が、オサレUIについては人を選ぶかもしれない。
録音停止すると、アプリ起動画面に戻る。アプリ2ページ目で録音一覧の確認ができる。一覧画面は(かつての)友達画面に似た感じだ。わざわざクラウンで回して選択する。しかも選択する度にタプティックエンジンでブルッとする。なんという無駄オサレUIだろうか。
しかも録音再生すると、OS標準のメディアプレーヤーではなく、アプリ独自プレーヤーにて再生される。録音中と同じく波形?アニメ付きだ。
録音一覧画面で対象のファイル?を選択した状態で強押しすると、共有等のメニュー画面が表示される。
ここまでがWatchアプリ側の挙動となるが、いかにもWatchアプリのガイドラインに沿いましたよと言わんばかりで、OSとの親和性云々を主張し過ぎな感がある。
YouTubeに動画レビューがあったので貼っておく。vineが生きていれば自分でアップしたが…
Auroraと比較してやってることは同じだが、どうにもUIが邪魔をしていると思うが、いかがだろうか。iPhone・Macで同じアプリを出していて、さらにWatchにも対応したものがこのパターンに陥りやすい傾向がある。
レビューつづき。
面白いのが、共有メニューにiTunesファイル共有アイコンがあるところ。ちなみにタップすると「iTunesに繋げばファイル転送できる」等のダイアログが出るだけだ。
先で述べたように、このアプリもコンプリケーションに対応している。アイコンタップでアプリが起動して録音がスタートする。ただし、Auroraでは録音中に経過時間もコンプリケーションに表示されるが、Justの方は経過時間は表示されない。というかアイコンの変化もない。ユーティリティの上部でしかやってないが。
まぁバックグラウンド録音は、文字盤に録音中アイコンが表示されるわけだから、コンプリケーションの方にアイコンの変化がいるかというと微妙ではあるが。それでも経過時間はないよりあった方がいいだろう。
ちなみにどちらのコンプリケーションも、録音中にタップした場合は、アプリ画面に戻るだけで、自動で停止するわけではない。つまり、文字盤のマイクアイコンのタップと全く同じ挙動になる。自動停止してくれたらうれしいが、OSの仕様的に無理だったのだろうか。
iPhoneアプリ側の機能として、この他に文字起こし機能もあるが、バックグラウンド録音の話とはかけ離れるので試さなかった。これもYouTubeに動画レビューがあったので貼っておく。精度はまずまずといったところか。
機能から見た目やUIまで総じて優秀なアプリで、アフィ目的とはいえ各種ブログで紹介されるだけのことはある。が、個人的にはUIの面が気になってAurora以上とはとてもなぁ…
アプリ紹介4:wRecorder for watch pro(iTunesリンク)
4つ目。有料で¥120。
アプリレビュー2と3で取り上げた、Yongchao Wangさん作。Aurora同様にシンプル路線…だが有料だ。
- Watchで録音後、iPhoneへのファイル転送は手動
- iPhoneからPCへのファイル転送は、iTunesファイル共有機能を使う
- テキスト入力も可能
ファイル転送が手動というのが惜しい。全体的に何か物足りない。操作性にもクセがある。
やはり、録音後に保存するために手動操作がいることと、iPhoneへ自動転送されないことの2点がマイナスポイントだ。他のアプリより2手遅れているのは有料の割に痛い。
ちなみにテキスト入力だが、Justの文字起こしとは違って、OSの音声認識または手書きでの入力となる。そして、何故かテキスト入力モードに限って、iPhoneへの自動転送が行われる。
あと、音声入力時に、言語設定で日本語に変更すると録音モードに入らないのは何故だ。使わんけど。
録音の品質
これについては、もちろんWatchのマイクを使うので、別段バックグラウンドがどうとかは関係ない。Auroraを使って1時間で室内〜道路を徒歩〜電車〜飯屋と録音していたが、PCに転送して聞いてみた。まぁ音量の小さいのはガマンするとして、電車のアナウンスはバッチリ、室内の会話はギリギリ、道路では車の音以外はほとんど雑音のみ、といったところ。
とは言うものの、ワイシャツ+ジャケット+コートの袖+手袋の完全防御の組み合わせだったので、それで上記の結果であれば、充分ではないだろうか。さすがWatchのマイクは優秀だ。
あとがき
いかがだろうか。俺はAurora Recorder一択だが、使用感やUIの好き好きはあるだろう。特に無料のものは躊躇せずに試せるので、実際に使ってみてたしかみてみるのがよい。OS2の頃に比べると各アプリに個性が出てきて、選択の幅が広がったのはいいことだと思う。(数は依然少ないが…)
ちなみに、アプリレビュー1でベタ褒めしていた、Lin Feiさん作の「録音」については、無料版・有料版問わず、バックグラウンド録音に対応していない。iOS11対応のバージョンアップは何度かしていることから、メンテナンス放棄というわけではないと思うが、バックグラウンド録音への対応は諦めたほうがよさそうだ。リクエストは送ったが反応がない…
ほかにもバックグラウンド録音対応のアプリはいくつかあるが、そもそもニュースサイトやブログ等でWatchアプリはほとんど取り扱われないことと、録音アプリは腐るほどある割に検索条件でバックグラウンド録音(やwatchOS4対応)で縛ることもできず、せいぜい日付指定(OS4なので2017年10月くらいか)でググるしかない。
今回のケースに限らず、Watchアプリ探索は面倒なので、手助けになれば幸いだ。
参考になります。助かります!